2013年02月19日

左手 「気持ちいい……」


楽器を演奏していると、音が出ること以外にも

“気持ちがいい"

ことが実はある。そもそも “振動" はバイブレーターみたいなもので、トロンボーンなら、口周りから楽器を持つ左手まで、いい感じの振動が伝わってきたら、それだけでも身体はかなり喜んでいる。あまりの気持ちよさに眠くなってしまったことは………さすがにない。どちらかというと、チェーンブラーゼンに繋がる。飽きるか疲れきるまで “振動させちゃう" ことになる。それは、必要な練習行為なので、いい振動で気持ちよくなるのは、大切なことだ。


で、その “音を出す" という行為以外にも実はあったりしまして……

僕だけかもしれないが、F管のレバーを押し引きするのがとても快感な “時がある"。いつもではない。

かつてコルトワを吹いていた時は、ロータリーのゴムが半透明のシリコンだった。今はホルンなんかもほとんどとって変わられた黒のラバー、それと比べ、柔らかく跳ね返りも大きいもの。音色も柔らかくなり良いのだが、ホルンもテューバも、あまり跳ね返ると細かく速いパッセージのプレーに支障がある、ということで、黒が主流になってきている。しかし、今だにシリコン好きはいるし、更に柔らかいコルクにこだわり続けているプレイヤーもいる。コルクは耐久性に問題があるが、付け替えながら頑張っていたりする。トロンボーンのF管はそこまで影響ない使用頻度なので、今も、おフランスのおクルトワは、おシリコンだ。

とても小さいロータリーのゴムでも、サウンドには大きな影響があり、それぞれにこだわれば深みにはまれる。僕もコルトワに黒をつけて吹いていたこともある。


で、何が気持ちいいのかと言えば、そのサウンドの快感ではなくて、レバーを押した時のシリコンに当たる感触、バネの力を借り戻ったときの跳ね気味な感触が、なんとも気持ちよかったのです。左手の親指、手全体が感じる感触。

“ポヨン! パヨン!!"

みたいな。コルトワのレバーのボールジョイントの機密性は、バックより精度が高く、レバーの長さのバランスも影響していたのでしょう、なんだか

たけ “……い、いい……"

吹いてない時、やたら

“ポヨンパヨン ポヨンパヨン"

させていた。そんな幸せひとつとっても、トロンボーン奏者になってよかった、と思っていたりした。

最近はバックを吹くことが長く、黒ラバーの場合この喜びは大分へってしまっていたのだが……

数日前、ラバーが両方共割れかかっていたので、交換してみた。ロータリーにオイルを注し、ボールジョイントにもグリスを塗り、で動かしてみると

左手 「お!……き、気持ちいい……」

特に左手親指の喜び様は半端なく、見るとよだれまでたらしかけてる。どういう感触かというと、柔らかいが、しかしめり込みすぎない

“トィン!"

ってやつ。往復すると

“トィントィン"

と、なんともいえなくいい感じ。シリコンのようにスーパーボール的快感とはちがい、高反発な逞しさ、しかし様々なタイプの力を受け止めてくれる、懷の深さを感じさせる。決して硬くはなく、ほんの少しのめり込み。

問題は、この幸せがコルトワの時のように長続きしないことだ。このラバーはバルブオイルを吸うと硬くなるし、何度か押し当てると、やっぱり硬くなる。 “賞味期限" が短いのだ。更にバックのボールジョイントの機密性。それがバックのサウンドを生んでいるようなのだが、グリスやオイルを注しても、比較的早いスパンで

“カチャカチャ"

いいはじめる。生徒はよく “カチャカチャ" いわせて僕に怒られている。演奏に雑音としてコーティングしちゃってるのに “へっちゃらへ" なのは、演奏に対しても “へっちゃらへ" だろうと。実はそれだけでなく、このトロンボーン奏者だけの幸せを感じて欲しい、という気持ちもあるのだ……僕だけかなあ、気持ちいいの。バックならどれでも感じるわけではないので、バネの強さもよい頃合いがあるよう。

セイヤーも悪くなかったが、やはり喜びは短かった。黒ラバーの宿命かね。

“美人は三日で飽きる。黒ラバーは三日で硬くなる"

木管の人達も、パタパタいわせると気持ちいいのでしょうか。いい方が、いい指まわりしそうですね。

実は床との相性がよければ、スライドを抜きながら床と遭遇させた瞬間の “石突きゴム" もいい感じで

“トゥン"

と、跳ねる時がある。正に

“一ゴム一会"

マニアックな喜びですが、僕の毎日には大切な感触なのです。


吉川さん、レバー押すだけじゃなく、ちゃんと練習しましょうね。


N響、練習二日目、川越へ。

posted by take at 20:06| 活動報告