2020年08月05日

まずは話が聞けるかどうか


距離をおいて演奏するN響、仲間たちを見ながら、自分があそこで演奏したらみんなが随分遠く感じるんだろうなあと、NHKホールのステージ上を妄想していた。

アンサンブルとは、耳や目もだが気配まで感じながらやるものだ。肌で感じる空気、振動、それ以上の霊感のようなものまで使い。あらゆる振動は身体全体に浴びており、距離が変われば当然感じられる情報量も変わる。


僕はあのステージで、きちんと感じることができるのだろうか‥‥


そう思った瞬間、まず演奏家にはシンプルに「人の話を聞く力が必要だな」と感じた。

音からはあらゆるものが聴こえなければならず、細かい微妙な振動も聴き逃してはならない。人の話を聞くというのも、実はどこまで聞こえるかという精度だったりする。理解力ももちろんだが、その前に聞き方ともいえる聞く力が必要。

そして俗に言う「空気を読む力」ともいう、心のみならず肌や霊感を使って聞く力。目に見えない魔法のような能力を持ち合わせないといけないんだろうと。

あらゆる失敗を思い出し自戒の念を込めてだが、生徒たちには、今まで求めてこなかったこれらを投げかけなければならないなあと思った。


素晴らしい演奏ができるようになりたいなら、まずは人の話が聞けなければならないよ。そして、たった今君のいる空間で起こっていることを肌や五感を駆使してビンビンに感じられるようでなければ、アンサンブルはできない。共演者との、作曲家との、自分の本音とのアンサンブル。

アンサンブルができないとしたら、演奏家としては失格だからね。

posted by take at 18:45| 管理人よりお知らせ