2017年02月26日

今のベルリンと今の僕


今日は1日オフ。午前中はホテルで練習をし、午後から「過去を巡る散歩」に出掛けました。


ベルリンから帰国してもう20年が経ちました。もちろんN響でも個人的な旅行でも複数回来ており、家を見に行ったり町を歩いたりは初めてではないのですが、今日はなんだが特別な気持ちで様々眺めてしまった。

簡単に表現すると「今までで一番感傷的になった」、そんな気がします。

前回N響で来た時の、首席奏者栗田さんの言葉を思い出しました。(栗田さんは僕より9歳上で、N響に入る前、二年間ベルリンドイツオペラに在籍していた)

「吉川、今日あちこちずいぶん歩いたんだけど、今までで一番センチになっちゃったよ」

僕は「随分時間が経ったからかなあ、それとも栗田さんも50代になってるからか……」と思ったのを思い出します。

実際、現在50を過ぎた自分が同じように感傷的になりながら町を歩いた。今までなら、懐かしんだりするだけだったが、今日は

「20年前はまだ若くて、何にもわかってなくて、でも人生上向きに登っていく感覚しかなくて。緊張しながら頑張ってたなあ」

と、若き自分に対して思いを馳せてしまいました。


今回のホテルはフィルハーモニーの近くにあります。その一帯、ポツダマープラッツはあの頃はだだっ広い工事現場だったわけで、まるで違う近代都市の出現に、位置関係含め雰囲気がどうしても思い出せない。

そしてそこから歩きながら下宿を目指すわけで、かつての繁栄、旧西側が、今は過去の賑わいとなっている。もちろんさびれているとまでは言わないし、クーダムはいまだにブランド店が立ち並ぶ華やかさだが、でも新しい町に賑わいが移ったのは確かなようだ。

そして今日は日曜日。本当に見事に店は開いてない。いくつかのカフェやレストランが営業しているが、町は綺麗に休日仕様。ただ歩くだけになるそれがまたいつになく懐かしく。


家のといめんの花屋、あの時は新しかったのだろう、周りよりひときわきれいだった。しかし年月はその看板も店の雰囲気も古めかしいものに変えてしまっていた。

僕も店も、あれから随分生きてきた。

その閉まった店のガラスに自分をうつしたら、一瞬、あの頃の僕がこちらを見ているように見えた。

彼は実際、今より何もわかっていなかった。しかし夢も希望も充満していたし、今と同じく自分自身の内側と会話しながら、見聞きする新しい刺激を理解吸収しようと一生懸命だった。


電車を乗り継ぎホテルへと戻る。ベッドに横たわりながら反芻する。なんだか過去の町を見つめるように今日は歩いていた。

変わった場所、変わらない場所。今日と同じものも見ていたあの留学生活で大きく生き方が変わった僕は、その後も変わり続け、今落ち着いて演奏家を続けることができている。

そのこと自体はなんだか嬉しくて、変わったはずのベルリンが全体としては変わらなく見えたのは、この歴史ある町が少なからず僕の中に練り込まれていて、今の日本での生き方を支えてくれているんだ、あの若い僕も頑張ってみた甲斐があったなあと、そうしみじみと感じたのです。


休日

posted by take at 14:25| 活動報告