今僕が最も考察に時間を使っているのが
「聴衆が本当に一番聴きたい演奏というのは、どういう演奏なのか?」
ということです。どうしてこれを考えてしまうかというと、このことと私たち演奏家が意識しがちなことには、普段ずれが生じがちだと思うから。
やり手と受け手は、そもそもこれこそが最も合致しているべきでしょう。本当に一番聴きたい演奏を一番やろうとする。
結論の一つから先に書くと、聴き手というのは「ミスのないちゃんとした、上手い演奏というのが一番聴きたいものではない」ということ。しかし演奏家は、それこそを第一義に意識してしまい、求めてトレーニングしていたりする。
N響でも、指揮者のやることにより、ノーミスですごく整っていてある意味ちゃんとしていても、ほとんど心に響かない演奏はある。
それは最も求められているものとは違うのだと思う。
「全ての聴衆が同じものを所望しているとは限らない」という意見は無視できない。しかし本当に演奏が成功した際は、大半の聴衆は心からの大きな拍手を送ってくれる。つまり素直に楽しめて喜んでくれるものとは、個人の状態や趣向を超えてくる力を持っている。
それがどのようなものなのかというところに、やはり答えがあると思うのです。
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