2022年05月22日

画力・パワー・演奏力


アヴェ・マリアは「マリア、おめでとう」「めでたし、マリア」という意味。身篭ったマリアに対する大天使ガブリエリの祝詞とのこと。

つまりシュレックのソナタと同じ位置に立つ。


そんなアヴェ・マリアをYouTubeで見ていくと、壁紙が受胎告知の絵画のものも。トリプティックの一枚だったりするような雰囲気の。

これを含め宗教画を観た経験値もかなり増えてきたことにより、キリスト教徒ではない僕でも、ある意味強力な運命の元にあるこれらの荘厳な世界観が、ビジュアルとしても滲みてきた気がする。


このゴールデンウィークは珍しく休みだったので、連日美術館を巡った。


おそらく、これらの経験は僕の音楽観や価値観を徐々に変えていってくれているのだと思う。

やはり素晴らしいとされる名画家たちの作品からは、圧倒的な画力という物凄い芸術的インパクトや、エネルギー渦巻く力に襲われるものだ。

今目の前のさりげない絵を見ながら、この次に観るであろう隣のそんな絵が視界の片隅に入ってきた瞬間、すでにその近辺が恐ろしいほどのパワースポット(この言葉の意味としてのいわゆる使い方とは違うのだが)に包まれており、名画の前に立つ人たちが圧倒されているのまでわかったりする。

そちら側から、目に見えないパワーが襲ってくるのだ。

心して立たないと、吹き飛ばされてしまうかもしれないくらい。


演奏は聴取を吹き飛ばずものではないが、しかしそんなエネルギーは全くもって必要なものだろう。

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2022年05月21日

特産空気


四国出身の音楽家による四国ツアーというのに参加しています。

ゲストとして瀬戸フィルハーモニー交響楽団に参加し、声楽やピアノ、バイオリンのソリストたちとの共演含め、充実したプログラムで四県もれなく周ります。

瀬戸内の気候からの空気はやはり肌に馴染みます。

18歳まで全身を包んでいたこの空気が、なんだか心地よいのです。

今回強く思ったのは、徳島高知含め、東京と圧倒的に違うのはこの「空気」だなと。

東京の空気が「汚い」という印象はない。都会の空気というなら、欧米のいくつかの都市の方が排ガスの匂い含め、吸うからに汚れを感じる。

しかしこの四国の空気のように「自然さ」というのは、東京の空気からは感じにくい。1週間の旅で、比べてみて改めて思ったのだ。

ただ「じゃあどんなんですか?」と四国の人に聞かれたら、どうしてもうまく言葉にできない。

とにかく「四国のが自然に感じ、東京のは(不快とかいうのではなく)そう感じない」のだ。

自然じゃないなら「人工的」なのだろうか。

もしかしたらそうなのかもしれない。人の数だけ二酸化炭素は多いだろうし、エアコンの室外機含め建物からの発生物も多い。風通しが悪かったり、日陰になっている箇所も多い。


美味しい海の幸、山の幸はじめ飲み物など、地方の美味しさを感じるものは全国に山のようにある。

ただ考えてみたら、身体に一番入れているのは空気だ。


東京に住む以上仕方がないとはいえ、マスクを外して吸う空気の自然さは、心から羨ましくなるものだった。

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2022年05月20日

にいまし


沖縄には「にいまし」と言って、同じようなことをしていても少しづつ良くなっていくという意味合いの言葉があります。

これは琉球伝統料理を作る人の「昔ながらの同じ作り方でずっとやっているだけなのですが‥」という言葉と共に紹介されていたもの。


僕にはとても素敵な価値観にうつった。

「同じようなことを繰り返しているだけでは人は駄目になる」という言葉の方がしっくりくる人は多いだろう。

もちろん惰性になってしまい、自分がやっていることのクオリティを精査する能力が落ちたり、取り組みが粗雑になるなら良いことにはならない。

しかし「本当に素晴らしいこと」をぶれずに繰り返した人だけが気づけることはあり、そのことこそが、クオリティや魅力を盤石にしていく。

この「同じようなことをする」ことを疎ましく思って、すぐにスタンスを変えてしまう人には、決して「少しづつ良くなっていく」ことは訪れないのだと思う。

posted by take at 15:50| 活動報告

2022年05月19日

特別なフレーズ


コロナ禍における企画、西下航平さん作曲の「はなれて奏でよう トゥモロー・アヘッド」を収録してYouTubeに上げるものは、多くの演奏家がやり甲斐を感じて取り組んでいました。

曲は美しく魅力的。寂しい社会状況、制約のある生活の中、心が穏やかなる幸せを感じるような素敵な小品でした。


先日書いたアヴェ・マリアの素晴らしい前奏たちの中、カッチーニのそれが「何か懐かしく感じる」と思っていたら、よく聞くとこのトゥモロー・アヘッドの一部に少し似ていたのです。

カッチーニのものも西下さんの音楽も、そのシーンはとても切なく心に染みる素晴らしい音楽で、やはりそういう

「特別に素晴らしく感じるフレーズ」

というのはあるのだと、あらためて思いました。

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2022年05月18日

あの音、復活へ


何度かここに書いたことがあるのですが‥‥

高校3年の夏に、素晴らしいトロンボーンの音と出会ったことが忘れられない。

高松市民会館大ホールにて、地元出身の音大生たちのソロコンサート。4学年上の中学の先輩、伝説の名手のボザのバラード。その艶やかなサウンド、豊かな表現に、東京で勉強をすることの指標だけでなく、トロンボーンの演奏が伝えうる力まで刺激的に感じたのでした。


あれから40年近く。

高松で長く教員をされた先輩は定年も迎えられ、時の流れを感じざるを得ず。

そんな先輩が「決めた、トロンボーンを吹く!」と。

ご本人曰く、大学卒業後はきちんと練習せずいい加減に吹いていた、ここ10年は楽器も倉庫にしまっていて‥」


そんな先輩が再びトロンボーンとガッツリ向き合うことにしたと宣言。

またあのサウンドが聴かせてもらえる日が来るとしたら、それはとてもとても素晴らしい未来だと、心底嬉しくなったのでした。

posted by take at 09:30| 活動報告