2020年01月22日

少女パラディスへの憧れ


このcesがいいなあ…


パラディスの「シチリアーナ」。この美しいEs-durのメロディ、始まってから5つ目の音がcではなくces。その音が、僕をなんとも言葉にならない世界へと誘うのです。


マリア・テレジア・フォン・パラディスは、オーストリア、ウィーンで活躍した女性音楽家、作曲家(1759年―1824年)。5才にはもう視力を失ってしまう。モーツァルトの『ピアノ協奏曲第18番 変ロ長調』は彼女のために書かれたと言われている。

消失したものが多く、残されている作品は極めて少ないが、バイオリンのために書かれた「シチリアーナ」は世界中で愛奏され続けている。N響のコンサート、コンチェルトのアンコールにソリストが無伴奏で弾くことも。


なんでもっと早く吹かなかったんだろう……


この音楽に出会ったのはもう随分前、若い頃デュプレのチェロによるオムニバスCDの最後に入っていたものを何度も聴いていた。

楽譜も手に入れさらったりもしたが、人前でピアノと披露するのは今回が初めてになってしまった。もう半世紀以上生きてから。

徳島でのアウトリーチ。オープニング、プライヤーの明るいワルツでスタートしたその二曲目。まるでちがう曲調をと。


メロディースタートの曲。アウフタクトのgはアラインで、オンビートから静かにピアノが並走し始める。

伴奏は音が少なくとても簡素であり、メロディーもどんなに盛り上がっても荒らげるような世界観ではない。

大人を表した感じではなく、だからといって小さな子供でもない。10代の少女の淡い憧れといった感傷か。

今目の前から、こちらを見つめる若い眼差したちに向けて「君たちの心の景色のようだよ」と奏でることとなった。


なぜこのcesをもっと早く吹かなかったんだろう……


静かなる後悔と共に、柔らかい幸福の響きに僕自身が包まれながら、選ぶ音色を愛でる時間が流れています。


徳島でのアウトリーチ、学校コンサート

posted by take at 18:35| 活動報告