2017年07月18日

演奏旅行


「演奏旅行」

と聞くと、とても素敵なことにうつる人が多いだろう。

音楽を演奏しながら各地を廻る。その場所場所で、多くの人たちに聞いてもらい喜んでもらう。その土地のものを飲み食いしながら、いろんな宿に泊まり。もしかしたら観光なんかもしながら。

いや、そもそも望まれて旅行をすること自体仕事って、なんて素敵な人生だろう


……いや、実はね


僕は大学三年になったばかりの頃、日本フィルのツアーにエキストラとして初めて参加した。いきなり地元四国や中国、九州も行くことができた。

演奏家として仕事ができること、自分がピックアップされたことが何より嬉しく興奮したが、それ以上に不安と緊張は大きかった。

何をしなければならないか、何ができなくてはならないか、過ごし方やハードさもわからなかったし、周りの人たちは慣れたものだし。金魚のふんみたいについてまわるので精一杯。演奏も態度も発言も、そそうのないよう頭の先から足の爪先まで緊張しきり。時には誰もいないホールの片隅に逃げ込み、独りで時間過ごしたりもしていた。


オーケストラの演奏旅行で観光できることはほとんどない。移動と本番で、大体スケジュールはきちきちだ。夜の食事は楽しいが、でも若いうちは先輩の話を聞きながらあたおたしていることも多かった。説教されることもあったし、飲み過ぎて失言したりも。

何より健康な状態で、きちんと遅れず、各地ホールへたどり着き、ベストパフォーマンスをしなければならない。それができて当たり前。プロだから。

コンディションの調整は慣れるまでよくわからず大変だし、慣れても移動状況や天候、流行りの病気や自分の疲れなどで、常に安定させるのは何気にテクニックを要する。


だから、楽しくて素敵なばかりじゃ……


いろいろ大変なことがあっても、でも今は幸せな仕事だと思います。

いろんな地方の方々に、普段は聞く機会の少ない演奏を楽しんでもらえる。

会いに来てくれる人もいる。一緒に食事したいと言ってくれるひとも。


残りの演奏家人生は、演奏旅行のプロとして経験を活かして取り組み、できる限りよい演奏と充実した音楽の時間になるよう楽しみたいし、何よりきちんとしたい。今までだらけていたつもりは欠片もないけど、でも人生をきちんと全力で歩みたい。

とても有難い仕事を与えられているのだから。


N響米子公演

posted by take at 00:32| 活動報告