2017年03月02日

響きの進化


「トロンボーン演奏しやすいですか?…ですよね。僕らも弾きやすいし、いい音出るんですよ」

N響ビオラ奏者が話かけてくる。

パリのホールは噂通り素晴らしいアコースティック。昨年演奏したソウルのクオリティにも驚愕したが、コンサートホールにて聞けるオーケストラの音は、新しい美しさの時代に入ったように感じた。


このふたつは同じ日本人設計者の手によるもので、その人が手掛けた小ホール、ベルリンにできたピエール・ブーレーズホールも、すこぶる評判が良いようだ。

ソウルで演奏した時「ビオラってこんなにいい音してたんだ」と思った。いや、ビオラだけでなくいろんな楽器の音が、新しい美しさでもって僕の心に響いてきた。

「ホールは楽器の一部」とは、本当によく言った言葉だ。弾いている彼らは、同じように音を出している。なのに、いままでより格段にいい音に聞こえる。こうやって空間が進化していくことにより演奏家の感性も豊かになり、自ら発する音への欲求、そのクオリティも上がっていくのでしょう。

喜ばしいことであると同時に、今までもそういう音を出していたのに、そこまでの美しさに聞こえなかったのだとしたら、もったいなさ過ぎるなあと思った。

ましてや、アコースティックが良くないホールでしか演奏できない、良くない空間でしか練習できないとしたら、それはどんなに努力をしても限界があるということ。実は場所さえ違えはいい音が出ていることが露になるなんてことなら、あまりに虚し過ぎるし、悔し過ぎるなあと感じてしまう。

そう思うくらい、格段に美的レベルが上がった印象。これから、こういう音が世界基準になっていくのだとしたら、日本にこそ数多く存在して欲しい。


今回のツアーで感じているのは、響くということに関する感性の違い。我々がよく印象としてもつ、手元でホワーンと残響まで感じるものと違い、クリアーに聞こえながら空間を伸びていく。やはり、余計な響きはないことにより、クリアーに密度の高い音が純然とそこにあるということ。


留学中を思い出す。

「忘れないでおこう」という気持ちそのものを。


N響パリ公演

posted by take at 23:41| 活動報告