2017年02月17日

シベリウスの反応


シベリウスのバイオリン協奏曲。名曲中の名曲で人気者中の人気者ですが、もしかしたらN響のラインナップ、一番演奏回数の多いバイオリン協奏曲かもしれません。年に何回もやってる。演奏旅行にもよく登場する。今月末からのヨーロッパ公演にももっていきます。

このオーケストラ伴奏は何気に難しい。楽器によって何が難しいかは種類が違うが、アンサンブルの難易度が高いのは全ての楽器共通。複雑なオーケストレーション、テンポの揺らぎによる絡み、そしてソリストとのアインザッツ。


トロンボーンの場合、周りが大きな音で演奏している時にppやpppで和音を吹くパターンがいくつもある。

音程自体は複雑ではないが、何より音量によって生まれるテンションに差ができてしまい、周りと同じタイミングで出ることが難しいのだ。周りやソリストはスピード感をもって動く、そこに「ポン」と同時に出るには、求められている音量がかなり小さい場面が多い。

この話、世界中のトロンボーンオケマンが、うなずいてくれるだろう。


特に、第一楽章の前半に、ソロの符点四分音符と八分音符の符点のリズムの後に出るパターンがある。指揮を見てもまず合わず、必ず遅れてしまうのでソリストを聞きながら吹くのだが、音楽的には符点から次のビートへは向かっていくので、突っ込み気味に吹かないと合わない。しかもpppが書いてある。


突然ですが、ここで皆さんにクイズです。

人間の耳は、ffの直後のスビートppの頭が聞こえないことがあるという。これはなんとなくわかりますね。しかしppの直後がスビートffだったとして、そのppのおしりが聞き取れないことがあるという。わかります?

これは、音量によって耳が知覚するのにスピードの差があるからで、ppよりffの方が早く聞き取れるため、時間的には後から鳴っても被ってしまうということ。

ということは、シベリウスのこの場面も、ただでさえ遅れがちなのに更に遅く聞こえてしまうなら、もっと早く吹かなくてはならない、となる。

しかしさすがにソロより早く吹くのは恐ろし過ぎるし、そうやって意識しすぎて早すぎる結果になる場面もある。



これを考察した時、結局必要なテクニックとして

「唇の反応」

が不可欠だとたどり着く。息のスタートと唇の振動にどれだけタイムラグがないか。これは、基本的な能力として常に求めなければならないことだが、本当にきちんとできるかできないかで、このシベリウスの名曲、その出来は変わってくる。


そしてその反応をもってして、小さい音量の時に使いがちなゆっくりとしたタンギングではなく、クリアーに吹ける舌のスピード、動かし方を選ぶ。


大変にマニアックな話だが、それが質の高いオーケストラプレイをするということになる。


N響定期。

posted by take at 21:56| 活動報告