2017年01月06日

やっぱり好き


三輪郁さんの著作に『やっぱりピアノが好き!』というのがある。

今朝の朝イチ、レッスンに同伴したピアノ科の学生が、始まる前に美しい伴奏のフレーズをさらっているのを聞きながら、音出しをしていた僕の頭にふとこの本のタイトルが浮かんだ。



ねぇ、君はきっと長くピアノを弾いてきたよね。今芸大で学んでいるくらいだから、何かと苦労があったり格闘したりなんてテイストがあるんだよね。

でもピアノはいいね。僕らがやっているトロンボーンはじめ管楽器は、単音しか演奏できないじゃない。その音色の美しさや、フレーズを歌う喜びはあるけど、それは演奏の愉悦の一部だと思うんだ。ピアノは完成された楽器で、これら以外に和声や伴奏の全てを一人で再現できる。美しい音楽の完成品を一人で表現できる。

君にとってはやっかいなものでもあるんだろうけど、たとえばピアノを始めたばかりの小さな君に、今の君の演奏を聞かせたら、眼をキラキラさせて憧れると思うよ。実はそれくらい、もう素晴らしい音楽が君の手元から鳴り響いている。

僕がいつも共演している三輪郁さんが書いた本のタイトルが『やっぱりピアノが好き』なんだけど、いつか君にもそんな気持ちが心底宿る時がくるんだろうね。彼女が永いキャリアの中で格闘し、苦しみ、感動し、そしてある日「やっぱり好きだ」と思ったんだね。ピアノとのめぐりあいはこの上ない幸運だし、実は素晴らしい人生だと思うよ。今君が弾くのを聞いて、ふとそう思ったんだ。


そんな話しをしていたら、ようやくレッスンの時間になり、トロンボーンの楽聖が部屋に入ってきた。


ねぇ、僕がさ、「やっぱりトロンボーンが好きだわ」って言ったら、なんて思う?


きょとんとした楽聖は一瞬間をおいたが、次の瞬間

「単純に、嬉しいですね」

と答えた。

彼にもいつかそんな時がくる。それが、私たちが選んだ幸福な人生なのだ。


沖縄県芸、レッスン。

posted by take at 09:45| 活動報告