2016年12月02日

微動だにしない楽器


もちろん全ての楽器がそうだろうが、金管楽器をどのように持ち、どのような身体の位置にセッティングし、どのように指を動かすのかは、実はとても重要です。

それは演奏のクオリティにかなり影響がある。極めて微妙な変化であっても、結果に大きな影響を感じる。研ぎ澄ませば研ぎ澄ますほどそう。

一番大切なことは、腕や指を動かした時、楽器本体は極めて影響を受けず、安定していることだろう。それにより、振動のスターターになっている部分に無駄なダメージがなく、身体の動きだけが演奏に影響することができる。そうなることにより、音や演奏のフォルムが整然となり、安心感をもって聴衆に迎えられる。


ピアノは、どんな弾き方をしてもさすがに楽器は微動だにしないだろうから、自分の身体のポジションと動かし方だけの問題になる。

弦楽器は、弓が暴れてしまわないポジション、指の動かしやすさなど、その重要さは計り知れないほど大きく感じる。

管楽器は口との関係こそが一番センシティブ。口を動かして音を変えているので、それが極めて自在になるためには、指を動かしても楽器には動いて欲しくない。

自分の口の方だけ動きたいのだ。

木管も当然大きいだろうが、フルート以外は口にくわえているので、そこで押さえ込んでいるイメージがある。

金管は基本マウスピースを唇に当てているだけだ。支えているのは腕、手、指であり、口元は支える力をもっていない。

チューバは椅子や足に置いているし楽器も重いので、一番ぶれにくいだろう。ホルンは身体も斜めになるので複雑だが、足に置くスタイルもある。

トランペットは、自分の身体より前方向に楽器の全てがあり、空中に浮かしている。二本の腕の位置や手のポジション、身体の重心の在り方も大きく影響するだろう。


問題は、我々トロンボーンだ。

何回も言うが、実は左肩に置いておらず、ほぼ左手で持ち上げたまま演奏をする。楽器前後のバランスは、持ち手の位置で水平になるよう整えられているが、スライドを伸ばせば当然前が重くなっていく。

そう、トロンボーンは全ての中で唯一といっていいだろう、楽器の重心が移動するというやっかいなものなのだ。

そして楽器は、フルートやトランペットよりかなり重い。

更に動かすのは指ではなく腕であり、そのモーションは驚くほど大きく、場合によっては、蚊をしとめるようなスピードで可能な限り最速で動かしたりする。


こんな楽器を、どうやったら微動だにせずキープできるのだろう。


更に息やアンブシュア、舌がうまく動かせてないと、自分の口も動いてしまう。自分は動くは楽器はじっとしてないは。もう、整然とした美しいフォルムも何もあったもんじゃない。


さあどうする……


プロのオケマン含め、世界を代表する名手たちは見た目も自然だが、これは安定した演奏を望んだ心が、身体を理想の方向へ導いた結果であろう。ただ私たちは、更なるクオリティを目指し、細やかに研究すべきだ。身体と楽器の真実を、センシティブに理解していく必要がある。


少なくとも、吹奏楽コンクールの世界に散見する、全員一律に「椅子に浅くこしかけ、背筋を伸ばし、ベルアップ」というのが、楽器演奏の理想でないことは確か。

そんな簡単な話ではない。楽器はいろんな形、重さ、重心であり、吹き手の指も手も腕も様々。

目指すべきは、口元における楽器本体の微動だにしない安定、その指標に対する理解だ。

動きの悪いスライドで平気というのがだめなメンタルの代表になるのは、そういう理由。楽器のコンディション、そして何より自分自身ががさつでいてできるほど、トロンボーン演奏は単純ではない。そこには、まことに繊細な難しさがあるのだ。


川越へ。

posted by take at 13:17| 活動報告