2016年03月11日

昨日まで 今日 明日から


震災から丸五年が経った。

あの日に天に召された2万人の方々が確かに生きていたこと、これからも忘れないことを誓います。

僕は直接は知らなかった人たちですが、震災後友人になった方々を通じて、その命の存在ははっきりと感じることができる。尊い命が確かにあった。


合掌。


被災後、故郷の再生のため日々前向きに生きる人たちにとって、今日はただの通過点でしょう。これまでの五年があり、これからの未来がある。その間にある、特別でもなんでもない一日。

これまでのお付き合いの中で理解できた皆様の生きざま、これからの皆様の未来に多くの幸福が訪れ、これまでの悲しみと苦労が少しでも癒えることを願い、交流を続け、東北を訪ね、知ることを知り、感じることを止めずにいようと思う。


震災後、様々な困難の中、自ら命をたった人、思いを胸に故郷を離れた人、支援や交流に訪れた人、胸を痛めた人たち、諦めない人たち、様々な立場の人たち。

今日はただの一日ですが、改めて、これからも全ての方々と共に僕も生きていきたい。


ひとつ、感謝申し上げたいのは、被災地での皆様との出会いの中で、僕にとっての音楽の価値も立ち位置も大きく変わったこと。

僕と僕の音楽を受け入れてくださったこと。有難い気持ちがわいています。それもこれも、知れば知るほど魅力を感じる、三陸と、そこに生きるたくましき友人たちのおかげです。


「忘れもしないし、振り返りもしない」

ある被災者の言葉。


また、明日から。


Nーcrafts練習。

posted by take at 13:13| 活動報告

2016年03月10日

ようかん違い


練りようかんは、

日持ちがする=気遣い

ということで、目上の方に贈るのに良い菓子だそうです。

じゃあ、吉川家としては間違ってなかったんだ。


時は1983年の冬。初めてのレッスン上京は、以前書いたように(2012年11月27日『人生の宿題』)連絡船乗り遅れからスタート。不安と向殿さんとの出会い、親切に触れるという、なんとも普通じゃない流れで始まった。

翌日の早朝からのレッスン。場所は先生の御自宅。緊張マックスの中、エチュードやスケールを吹き終了。謝礼も渡し、そしてもうひとつの難関が。

「先生、これ、親からのお土産です」

僕が献上したのは、高松の老舗菓子屋のようかん。紹介していただいた高松の先生から

「先生、甘いもの好きだから」

と聞いており、母親が買ってきたものである。ね、間違ってなかったね。

ただ、この時のやりとりが少々……

先生 「ありがとう、吉川君。君、出身どこだっけ?」

「か、香川県です」

先生 「お!小豆島?」

「いえ、高松です、市内です」

先生 「小豆島はそうめん、有名だよね」

うっ、そ、そうめんが良かったということか(汗)……。もちろん違う。

「あ、あの、先生甘いものお好きだと聞いたのでようかんを………」

先生 「おぉ、ありがとう」

そして、次のレッスンを決めたりしていよいよフィニッシュ。

「ありがとうございました」

部屋を出ようとした瞬間、後ろから声が。

「はい、じゃあまた。そうめん、ありがとうありがとう」

うっ!!!! ど、どうしよう。「そうめんじゃありません。ようかんです」と言おうかどうしようか……

緊張のあまり高速で悩んでいるうちに、そのまま玄関までたどり着いてしまい、ついにはさようなら。

実は、33年経った今でも、先生には 「あれはようかんです」 と言えていない。先生ももちろん勘違いされただけだし、怒ってらっしゃるはずがない。

何せ好物の甘いものだし、日持ちする、献上物にもってこいだし。間違ってはなかったのだ。

ただ……先生は完全にそうめんのおつもりで、ご家族もそのつもりで、お湯まで沸かしてから包装紙を開けたのだとしたら。

妄想してももう遅い。

あれは33年も前。昭和のある一日だし、今さら、そうめん持ってけないし。


N響練習。

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2016年03月09日

扇の力


昨日のコンサート、ご来場いただいた皆様、ありがとうございました。楽聖たちは力を出したと思いますし、よい評価もいただきました。14日には高松公演もあるので、皆で楽しみながらまたトロンボーンアンサンブルの世界を広げていこうと思います。


今日からN響はブルックナーの八番の練習。長大な名曲の、素晴らしい世界観と向き合うことになる。

僕が休みの部分、池田君がチェロバスとユニゾンを吹いているのを聞いていて、ふと考えが。

「ねぇ、そこアクセント付いてるけど、コントラバスはほとんど等速で、テヌートの感じで弾いてるね」

池田 「楽譜についてないのかな?」

休憩時間、二人でコントラバスの楽譜を覗きにいく。チューバと同じく、アクセントは付いている。

「ここって、アクセントあんまりやってないよね」

楽譜を見せてくれた、後ろのプルトの人に聞く。

コンバッシー「そうですね…」

曲調にあわせて自然にそうしているのであろうし、前で弾く首席に合わせてのことだと思う。


休憩後、再びその部分をよーく見てみた。すると、

「そっかー。コントラバスの意識は、チェロとビオラのニュアンスに、完全に照準があってるんだ」

もちろん、無意識でもそう弾くように、マエストロの流れは作られている。だから、とても自然にテヌートで腕も動いているのだろうが、同時に、前で弾くビオラとチェロからの指標が後方に強く影響を与えているのが、ラインとしてビジュアルで見えたのです。扇の要(弦楽器のトップ奏者)から、放射状にはっきりと。コントラバスの首席はそれを意識しているし、後ろのプルトは前からきちんと受け取っている。


当たり前のような話で何を今さらだが、オーケストラというのは、本当に面白く、興味深いものだなあと、扇がはっきりと見えた瞬間に思いました。


当然我々は、我々のニュアンスを自発的に作りながらも、なおかつ前からの波のように拡がる情報の影響に身を委ね、協調と個性のハイブリッドを、更なる空間に向かって放つこととなる。

オーケストラとは、人生に必要なアイテムが、自然かつ必然的に備わっている、なかなかに凄い生き物である。


N響練習。

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2016年03月08日

理解を放て!


未来へ向かって生きていける。原動力の要に

『理解』

があると思います。

昨日まで、たった今までわかってなかったことが理解できることにより、それなりに生きてきた昨日までとは違う、少々奥深い生き方ができる。ある意味生きやすくなる(逆もあるが)。

更に、明日以降まだ知らないことが理解できて、今日より豊かな時間が送れるのではないか…

本能のどこかでそれがわかるから、そうそう生きるのをやめられない。


音楽、演奏もそうだと思います。

昨日までは知るよしもなかった魅力。旋律の。和声の。流れの。音色の。表現の。

それを今日のある瞬間知れたなら、もちろんその瞬間も喜びがわくし、明日以降も更なる魅力の理解を目指す目的意識が宿る。


アンサンブルにも、一番必要なことは、この『理解』だと思います。

より調和することにより、本来の和音の顔が、知らなかった明瞭さをもって現れる。

より和声の推移が互換性をもつことで、心に染みる物語が、知らなかった展開をしながら現れる。

より噛み合うことにより、爽快さを伴う快感が、知らなかった突発性と共に現れる。

知らなかった作曲家の魅力、美しさ、音楽そのものの

「本当はこうなんじゃないか」

と思ってしまえるような魅力。

仲間の…力、ポテンシャル、成長という変化、柔軟性、大人度、やる気、根性。

そして音楽性。


楽聖たちよ。より深まった理解を、今宵のため、そして明日からの音楽人生のために存分に放たれよ!!


東邦音大トロンボーンアンサンブル・コンサート。

posted by take at 11:54| 活動報告

2016年03月07日

東邦音大トロンボーンアンサンブル


明日は、いよいよ東邦音大のトロンボーンアンサンブルのコンサートです。僕が着任した翌年から始め、もう15回目を迎えました。関東にある音大の中では、今年度一番最後だそうで、多くの方々に聞いていただけたら嬉しく思います。

そう、一年かけた楽聖と僕の研究の集大成を世に問うものですし、若者たちの成長と音楽を感じて欲しいので、例年、宣伝したい気持ちは強いのですが、今年は更なる思いがあります。

僕のクラス、一年を通しての恒常的なアンサンブルトレーニングとしては、ドイツ曲集を利用したカルテットを、とにかく入れ代わりながら経験する、オケスタとセットにした時間を設けています。

春先にある東邦祭、後期の最初にやる学内演奏会、12月にある授業の一環としての室内楽発表会。これらは、僕はほぼノータッチ。楽聖たちで練習し、時間があれば本番前に一回くらいは聞くが、ガッツリレッスンはせず、彼らのその時できうる自発的パフォーマンスをまんま披露するもの。

年度最後の学外は、彼らの準備がほどほどなされてから、それなりにレッスンをし発表してきた。

特に、まだ東邦全体としてアンサンブルの経験が少なかった最初の10年くらいは、怒鳴りながらレッスンをしていた。あまり教師の手垢が付くのもどうかとは思うが、しかし音楽的に充実した形で披露して欲しい気持ちの方が強かった。楽聖たちが作ってきたテンポやニュアンスを、頭ごなしに直すことも度々だった。

ここ数年は、伝統の力がものをいい始め、レッスンを始めるタイミングでは頼もしさを感じることの方が増えていた。

そして今年度。僕はとある新しい自主的なアンサンブルトレーニング方法を提案した。それがなされながら数回づつ聞いたが、明日披露できる演奏のフォルムは9割5分、彼らだけで作り上げたもので、僕は少しのほころびを指摘しただけ。

しかし、過去のどの演奏会より説得力ある形に仕上がっているのです。

つまり、自分で自分を変える、自分たちで自分たちを変えるという、本物の理想の入り口に立てた。僕は、そう感じているのです。

アンサンブルは、合奏よりも、一人一人の思いと音楽がわかりやすい形で反映されるもの。ですから、あまり他人の手垢が付くべきではありません。

不思議な言い方に思われるかもしれませんが、「音楽大学生らしい演奏会を世に放って欲しい」、これも、長年の僕の希望でした。

先輩たちが積み重ねてきた実績、伝統、彼らの意欲と希望が、今まさしくそれを示そうとしています。

お時間のある方は、是非いらしていただけたらと思います。


第15回 東邦音楽大学・短期大学・アドバンスコース トロンボーンアンサンブルコンサート


3月8日(火)
開演 18:30(開場18:00)

【会場】
川口総合文化センターリリア音楽ホール

【入場無料】

【プログラム】

天地創造/ハイドン
組曲/カース
四重奏曲/ラフォーズ
バルカン組曲/ニロヴィッツ
中南米への旅/ペダーソン
エクステース/ピショロー
10のジャズ風ダンス/ヤーン
フェスティバル・ヴァリエーション/スミス


N響、録音。

posted by take at 18:18| 活動報告