2016年02月03日

なぜカラオケなら上手く歌えるのか


ウィーンでの教育の一場面、こんな話を聞いたことがある。子供たちにバスドラムの叩き方を伝える時、どこをどう持ってどのように叩くかなんてことは、一切教えない。

「雷ってどんな音かな?この楽器で出してみようか」

というアプローチ。

随分前に聞いたこの話が、最近やにわに理解できてきました。

僕はかつて、楽譜をきちんと正確に再現することの重要性を何より語っていたことがある。しかし考えてみたら、楽譜を正確に再現するだけで、作曲家の意図や自分の音楽性が自然と沸いてくるとは限らない。つまり、楽譜以外の音楽性というのはあきらかに必要ですね。当たり前な話。

どちらかというと、そちらが“先に”必要かと。

有名な歌手、様々なジャンルのミュージシャンの中には、実は楽譜が読めない人も結構いるというのは知られた話。作曲する人ですら、自分は歌だけ歌って採譜してもらったり、オーケストレーションもイメージを伝えその道のプロに仕立ててもらったり。そういう音楽家、世界中に結構いるようです。

だけどそんな人が凄くいい曲を作り、素晴らしい歌や演奏を披露したりする。そして楽譜は読めるし理論も学び作曲もするが、冴えない創作、冴えない演奏しかできない人も山のようにいる。

「世界中の民族音楽を演奏する人たちの中で、一体何人の人が楽譜が読めるのだろうか」

という記述も読んだ。



「いや、私音楽は素人ですから」

と言う人にとっては、楽器含め演奏をしないし楽譜も読めないし、という部分が素人の定義のようだ。僕はそんな人たちに言う。

「いやあ、音楽に素人も玄人もないですよ。皆さん、カラオケは歌うでしょ?あれ、立派な演奏ですから」

カラオケって演奏ですよ。しかも素人なんて言ってる人の中にも、プロの歌手顔負けに上手い人がいたりする。もちろん楽譜は読めなくても。


『何故カラオケが上手く歌えるのか?』

ここに、僕と生徒たちのこれからに、最も必要な鍵が隠されている。


実は僕が若かった頃より、世の中の人たちのカラオケ歌唱はとても上手くなった。あの頃は本当に音痴って人、結構いました。テレビにでる歌手、アイドル、一般人の歌がどんどん上手くなるのに平行して、日本中のカラオケボックスで披露されている歌も、どんどん上手くなったきた印象。

ただ、ここで立ち止まって考えたい。

なぜ、上手いのか。そしてカラオケなら凄く音楽的に上手くのびのびと自分らしく歌えるのに、トロンボーンになるとなぜたどたどしくなるのか。


答えは二つ。

まず、カラオケの方が演奏の理想がはっきりしているから。オリジナルの真似であろうが、自己流の歌い方であろうが、

“自分はこう歌いたい”

が、実は定まっている人が多いから。

もうひとつは、上手い歌い方を客観的ストックして知っているから。つまり小さい頃から、いろんな歌手の上手い歌を聞いて、音楽的に魅力溢れる歌い方のスタイルを知っているから。


トロンボーンでたどたどしくなるのは、単純にこの逆。理想をはっきりさせず吹くから。そしてトロンボーンのみならず、音楽的な器楽の演奏スタイルをあまり知らないから。

知らないというのは、例えば管楽器に限っていえば、吹奏楽でやるばっかりを楽しんだ延長で学びにくる、聞いていたとしても吹奏楽の限られたものだけとか。オーケストラも弦楽器も、ピアノも歌もあまり聞いたことがないから、どんな表現が音楽的なのかが、そもそもストックされていない。

ただ聞くのは好きだけど、演奏になると上手くいかない人もいる。これは前者が不足している。

つまり、カラオケ名唱にある、この二つを両方持ち合わせていることが器楽の演奏家にも不可欠である。


そこが的確にリンクし自分に取り込めれば、楽器の演奏にカラオケの快感までが注入され、大いなる幸せと満足を得られるのかもしれません。


N響定期練習。川越へ。

posted by take at 21:20| 活動報告